「ADHDじゃない?」
妻から、喧嘩をした時に言われた言葉です。最初にこの言葉を聞いた時、私は自分が何かの病気なのかと思い、悲しくなりました。けれどそれと同時に、「ADHD」という言葉に興味が湧きました。
ADHDは発達障害の一種で「注意欠陥多動性障害」といわれています。
参考:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html
妻は、合わせてこう言いました。
「この話3回目だけど覚えてる?」
これには非常に衝撃を受けました。正直な話、私は1回目も2回目もどういった話をしたのか、まったく覚えていませんでした。改めて前回と前々回の話をしてもらい、なんとか記憶の引き出しをこじあけてみたのですが、「話をしたような気がする」というくらいで何度振り返ってみても、思い出す事は出来ませんでした。
妻との喧嘩をきっかけに過去を振り返る
この事をきっかけに、自分はADHDのような特性はないか?と、過去を振り返ってみました。薄い記憶の中でこんな事を思い出しました。
・自分の引っ越しを手伝ってくれた友人の名前がわからなかった。
数年前高校の同級生の結婚式にて私の引っ越しを手伝ってくれた後輩がいました。その後輩から「花澤さんじゃないですか!お久しぶりです!」なんて言われたものの、誰かまったく思い出せません。「あれ誰だっけ?」と同級生に聞いたところ「いやいやお前の引っ越し手伝ってくれた〇〇だよ!、嘘だろ?」と言われました。
私はそれを聞いても彼の事をまったく思い出せないままでした。その後彼の名前を調べてみるとFacebookでも友達になっているし、知り合いであることは確かです。けれど、なんど振り返ってみても思い出すことは出来ませんでした。
・大学の先輩の名前が思い出せない。
何年か前に友人と都内で飲みに行こうと新宿をフラフラしていたところ後ろから声をかけられました。「花澤じゃん!元気~??」顔は覚えていた為「お久しぶりです!何やってるんですか!」なんて返答しました。
ですが、名前がどうしても思い出せませんでした。名前くらい忘れることもあるだろうと思うかもしれませんが、私はこの先輩とは何度も遊んでおり、一緒に飲みいったりBBQしたり合コンもしたりしました。こんなに一緒にいた先輩の名前を忘れるでしょうか?この時も、帰ってからFacebookで調べて、「そうだあの人だった!」となりました。
・人が怒っている理由がわからない
仕事でお世話になっている方から怒られることがありました。内容は「もっとちゃんとやってほしい」「責任感を持ってほしい」という事でした。私はこの時なぜ怒られているのか?が全くわかりませんでした。相手が怒っているのでシュンとしてしまって、一見響いたように見えていたのかもしれません。しかし、私としては「ちゃんとやっている」「責任感も持っている」と思っていたので、内容は理解出来るがどうしてここまで怒るのだろう?と思っていました。
当時はわからなかったのですが、これは妻との喧嘩と同様の事が起きていたのだと思います。過去にそこまで怒りはしないものの同じ内容で注意をされていました。きっと何回言っても響かないから、すごい形相で怒ってしまったのだと思います。
それ以外にも忘れるがゆえに困ることはたくさんあります。
・傘をよくなくす。どこに置いたか忘れてしまう。
・前に行った場所の記憶がない。(観光地や旅館、飲食店など)
・お世話になった人の、お世話になった内容を忘れる。
記憶の薄い引き出しの中でも、これだけあるのですから、実際にはきっともっとたくさんの事を忘れているのだと思います。これらの事だけでも他人を傷つけてしまうことが多々あります。
そしてこれは仕事においても大きく影響してきます。
ADHD傾向により仕事で困ったこと
仕事において大事な話を覚えていないというのは致命的です。数年前、私はかなり大きなプロジェクトの管理者を担当することになりました。大きな仕事というものには、関わる人や会社などがそれまでやってきた仕事とは比べものにならないくらいたくさんの方々がいました。結論からいうと、「記憶力が圧倒的にない」というのが原因で、上手く進めることが出来ませんでした。
プロジェクトの初期は関わるメンバーで、あーでもないこーでもないと色々議論をしてプロジェクトを進めていました。プロジェクトの立ち上げりは成功し社内でも上々の評判。きっとこれがずっと続くと思っていました。けれど、中心にいる私が大事な話を忘れてしまうのです。1対1でお酒を飲みながら語った話も、みんなで実施した決起会も、自分がみんなに語った言葉も、今思い出せと言われてもあんまり覚えていません。この事が表面化するのには、それほど時間はかかりませんでした。
その場その場で取り繕っている人に見えていたことでしょう。傍からみれば自分は、「いつも言ってることが違う人」になっていたのです。でも私自身の認識は違います。その場面ではそれが最良だと思って判断しているのです。けれど、過去の話を覚えていない人間の判断が、最良であるわけがありません。この事に気が付いたのは、プロジェクトが終わって数年後の事でした。
ADHD対策について
私は自分のADHD傾向に対して、多くの対策をとりました。特に困っているのは「記憶力」がないという点。対策は1つしかありあせん。忘れないようメモを取るしかないのです。
出来るだけメモを取り、自分なりに理解できるようまとめるようにしました。これで忘れなかった部分も多々あるので対策としては良かったのですが、取りこぼしてしまう状況というのが出てきました。予め決まった会議等であればこちらも準備が出来るのでメモの準備や望む姿勢などを作る事ができます。しかし、突発的に始まった話やお酒の席での話となると、なかなか準備してメモをとるなんて出来ません。なんとか携帯のメモに単語を入力するのですが、翌日見返してみると、なんのことなのかさっぱりわかりません。そして、お酒の席での話というのは、当時重要なものも多くあったのでした。
メンタルを壊し「適応障害」になる
もちろんそんな調子で仕事をしていて、うまくいくわけもなく私はメンタルを壊してしまいます。この頃になると毎晩涙が止まらなくなり、最終的には会社に出社することすら出来ませんでした。朝起きて会社に行っても、ビルの入口を入る事が出来ず周りをウロウロしていていました。会社に相談し、しばらく休職することになりました。
そのあと心療内科のクリニックへ行き診断されたのは「適応障害」というものでした。そこから2ヶ月間すべての連絡を遮断して完全OFFにしました。そこから完全に回復するのに約1年半の月日が必要になりました。今こうして振り返ってみても、とても辛い時期でした。
WISC検査を受ける
休職中、妻に付き添ってもらい、心療内科に行きました。過去にどういったことがあったのか、今どういうことで困っているのかを話しただけで涙が止まらなくなりました。自分の身に何が起きたのか改めて実感したのです。その日からカウンセリングがスタートとし、2019年の11月にADHDの診断テスト(WISC)を受けました。
結果は……正常の範囲内でした(!)。IQとワーキングメモリに差があったため、「確かに物事の処理に時間がかかってしまうとは思うが、この数値であれば正常の範囲内」という評価を受けました。嬉しいような、悲しいような結果でした。けれど医師からは、「ADHDは難しくてグレーゾーンの人というのはたくさんいる、本人が困っているかどうかが大切な部分だから何かあれば言ってください」と言われました。その言葉がとても嬉しかったのを覚えています。
テストの結果を受け、正常という結果が出ましたが「記憶力がない」という問題は何も改善されていません。まだまだ、多くの事を忘れていきます。けれどこれはどうしようもない、向き合っていくしかないと思い生活をしていました。
そんな中、またしても妻と大きな喧嘩が起きてしまいます……。
相手の怒りが理解できない
喧嘩では基本的に、自分が点で話をしているのに対して、妻は線で話をしています。私は何かが起きても、その度にリセットし、忘れて、すべてフラットの状態から話をしてしまいます。妻としては「何度も同じ話の繰り返し、もう許せない!」 というところまで来ているのですが、私としては「やっちまった、ごめんごめん」くらいの気持ちです。なぜここまで妻が怒っているのか? というのが私には理解出来ないのです。
ASDの傾向があるのでは?
これまで私は記憶力が原因が全て問題が起きていると思っておりました。しかしある日妻と喧嘩をした際にそうでは無い事を実感しました。
この日、A→B→Cという話し合いがなされました。自分は、A、B、Cと、3つの話がされていると感じました。けれど、妻は、A→B→Cは3つで1つの話だというのです。私は、AとBとCが繋がっているということがわかりませんでした。
ここで妻は「今回のあなたは、Aを忘れているわけではない、わかっているのに切り離して考えている」と感じたそうです。
妻の場合=A+B+C=積もった怒り
私の場合=A、B、C=それぞれ別の怒り
と、上記の様な考え方の違いが起きていたのです。これではお互いの怒りの温度が違うのも当たり前だと思います。私は正直に上記の事を伝えました。
そして妻は、はっと理解したようにいいました。
「確かにあなたはADD(注意欠陥障害)の部分をあるけどそれと併発してASD(アスペルガー症候群)の傾向もある気がする」
アスペルガー症候群(ASD)とは?
参考:政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html
ASDだと気付いてから
この事から自分はADHDだけでなく、ASDの特性も持っているのだと気付きました。チェックリストを調べ、アスペルガー症候群関連の書籍を読んでみると、かなり当てはまっています。
35年間生きてきて自分の特性というものがやっと理解出来たのです。もっと早く理解していれば……なんてなんて思うこともあるのですが、今こうして理解することが出来ただけでも幸せだと思っています。
自分の特性を理解していると、どういうことが得意で、どういうことが苦手か、はっきりと把握できるようになります。今までごまかしてたり、スルーしていた部分に自信をもって「私はこういう特性があるからこういう部分に気をつけよう」と人に伝えることも出来るし、自分自身に言い聞かせることができます。何よりこの特性があることを理解した妻は、私が点と点を繋げられない事に怒らなくなりました。関係がとても良好になったと思います。
定型発達の中に潜む『隠れアスペルガー症候群』
しかしながらクリニックでのテスト結果(WISC)は正常の範囲として数値が出ています。定型発達という事です。私自身どうせなら発達障害であると診断されたほうが楽だと思ったこともあります。
ですが、主治医によると、「発達障害は個人が生活において困っているかどうか」問題だというのです。
私は定型発達と診断されましたが、日々の生活に困っているので自身の事を「隠れアスペルガー症候群」だと思っています。正直なところ、この状態はとても辛い状態です。「普通の人」だと診断されながらも普通の人とは違う不調を抱えているためです。けれど、自分にこういう特性があるのだと理解することによって、生活は変わりつつあると感じています。
同じ様に隠れアスペルガー症候群で悩んでいる方へ
私がこのnoteを描いた理由の一番はこの「隠れアスペルガー症候群」で苦しんでいる人の助けになればと思ったからです。正常の範囲とテストで言われながらも日々の生活に苦しんでいる、自分はそうなんじゃないだろうか?と思う人の参考になればと思ったからこれを公開しました。
その苦しみは誰よりも自分がわかっているつもりです。
だからこそこれで苦しんでいる方が自分自身と向き合い幸せな生活になれるような発信をしていければ幸いです。